和食は2013年に「健康的な食生活を支える栄養バランス」などの特徴が評価され、「ユネスコ無形文化遺産」に登録されるほど、世界的に評価の高い食事です。
世界からも評価の高い和食ですが、日本人にはすこぶる愛されているのに、外国人の方に人気のない食材があります。それが「納豆」です。
外国人の方に、納豆を嫌いな理由を聞いてみると、「ニオイが臭い」「糸をひいて、くさっているんじゃないか」「食感が気持ち悪い」などといった意見が多く聞かれます。
日本人からすると辛辣な意見も多いですが、外国人の方が納豆を苦手なことは事実です。しかし、納豆は栄養価にすぐれており、外国人の方でも食べると意外にハマってしまったという声もあります。
この記事では納豆のすぐれた栄養価と、おすすめの食べ方をご紹介します。苦手意識だけで食べないと決めるにはもったいないぐらいの魅力が納豆にはあります。ぜひ、最後まで読んでみてください。
納豆はどんな食べ物?
外国人の方が納豆を苦手な理由で最も多いのが「ニオイが臭い」という理由です。独特のニオイと糸を引いている様子から「くさっている!」と思ってしまう方も多いのではないでしょうか。
当たり前ですが、納豆は決してくさっているわけではありません。まずは、そもそも納豆とはどういった食べ物なのかをご紹介します。
納豆は発酵食品
納豆は発酵食品のひとつです。発酵とは簡単にいうと「食べ物を微生物が分解し、見た目や味が変わること」です。
これは食べ物がくさる、いわゆる「腐敗」と似ていますが、発酵は「人間が食べても大丈夫なもの、体にいいもの」に微生物が分解し、腐敗はアンモニアなどの「人間にとって害のあるもの」に分解します。
実は、私たちの身近なところにも発酵食品はたくさんあります。
チーズやバター、ヨーグルトなどの乳製品は乳酸菌による発酵食品、ワインやビール、日本酒などのアルコール類は酵素や麹による発酵食品です。日本人以上に外国人の方の食卓に並ぶ、パンや紅茶なども発酵食品です。
発酵食品は「もとの食材を微生物が分解し、新しい成分が作られる」ことで「見た目や味」が変化します。もとの食材から変化した発酵食品は、以下のような特徴があります。
- 香りやうま味が増す
- 栄養価が高くなる
- 消化がいい
- 保存性がいい
先ほど挙げた乳製品も、牛乳を発酵させることでチーズやバターといった「形や味」を変化させた食材が生まれています。ブルーチーズはアオカビによって熟成され、香りや味が変化し、保存性が増したわかりやすい一例ではないでしょうか。
高級レストランのメニューにも、熟成肉というものが登場しています。中にはカビが生えるくらい熟成させて食べるものもあります。
「食材は腐りかけが一番うまい」といった言葉があります。微生物が食材を分解することで、もとの食材のままでは味わえない「うま味」が増すことは、食の世界では広く認知されています。
納豆の栄養価
納豆は大豆を発酵させた発酵食品です。発酵により、大豆よりも栄養価が高くなります。栄養価が高いということも、日本人に愛されている理由の一つです。
納豆に含まれる代表的な栄養素をご紹介します。他の食材と比較しても高い割合が含まれています。
- タンパク質 … 7.4g(牛肉肩ロース 45g分)
- 食物繊維 … 3.0g(ニンジン 1/2本分)
- 鉄分 … 1.5mg(牛レバー 40g分)
- ビタミンE … 0.5mg(トマト 1/2個分)
- カルシウム … 41mg(ヨーグルト 1/2個分)
参考:納豆の栄養価 | おかめ納豆 タカノフーズ株式会社 (Japanese)
日本は長寿国として知られています。納豆を食べる習慣が、日本人の寿命を延ばすことに一役買っているのかもしれませんね。
納豆のネバネバの正体
実は外国人の方が苦手とする「ネバネバ」にも、重要な役割があります。
納豆は、大豆を納豆菌が分解することによってできます。「ネバネバ」は納豆菌がタンパク質を分解してできたグルタミン酸と、糖の一種であるフラクタンがたくさん絡み合ってできています。
グルタミン酸はうま味の素となり、納豆のおいしさの素になっています。フラクタンはミネラルと結合しやすく、骨の成分であるカルシウムの吸収を高める効果があります。
ネバネバは納豆の「おいしさを決める要素」であり、食べ物から摂取した「栄養素を体に吸収しやすくしてくれる役割」があるのです。
余談ですが、納豆のネバネバは吸水性にとてもすぐれています。ネバネバに放射線(γ線)をあててゲル状にしたものは、1グラムで5リットルもの水を吸水できます。この性質を利用して、吸水性にすぐれた紙オムツを製造するのに活用しています。
また、砂漠に植物の種と一緒に埋めることで、砂漠を緑化させようとするプロジェクトとして納豆菌は注目されています。納豆が世界を救う可能性を秘めているのです。
参考:納豆は地球を救う。驚愕の納豆パワー! 原 敏夫 氏 (Japanese)
基本的な納豆の食べ方
納豆の基本的な食べ方は「ご飯にかけて食べる」です。
ここでは納豆を食べたことがない!という外国人の方でもわかるように、基本的な納豆の食べ方をご紹介します。
- STEP 1蓋を開ける
納豆のパックの角に矢印がついています。フタを開けるように持ち上げましょう。
- STEP 2タレとからしを取り出す
納豆にかけるタレとからしがフィルムの上に乗っています。あとで使用するので取り出しておきます。
- STEP 3フィルムをはがす
納豆の上にある透明のフィルムをはがします。納豆がフィルムにつかないようにゆっくりとはがしましょう。
※ワンポイントアドバイス:最近の納豆のパックは蓋が切り離せるようになっています。フィルムを蓋にはりつけてから切り離せば、フィルムで手がネバネバすることなく次の作業に移れます。
- STEP 4混ぜ合わせる
底に穴を開けないように注意して、納豆をよくかきまぜます。パックのままかき混ぜるのが難しい人は、別の容器に移して混ぜ合わせましょう。
※ワンポイントアドバイス:タレとからしを先に入れてから混ぜ合わせる人もいます。好みの問題ですが、先に混ぜた方が納豆がふっくらして舌と触れる面積が広がり、うま味を感じやすいという説があります。
- STEP 5ご飯の上にのせて食べる
ご飯の上に納豆をのせて「納豆ご飯」の完成です。日本では最もポピュラーな食べ方です。好みでネギや卵を混ぜて食べることもあります。
納豆の食べ方のバリエーション
ここでは納豆の食べ方のバリエーションをご紹介します。
先ほどご紹介したように、納豆ご飯もネギや卵をいれるなど、様々な工夫があります。
他に納豆ご飯に入れるものとしては以下が挙げられます。自分だけの納豆ご飯を追求してみるのもおすすめです。
- 梅
- かつお節
- しそ
- ジャコ
- キムチ
納豆ご飯以外にも、おすすめの食べ方があるのでいくつかご紹介します。
納豆パスタのように、納豆と他の料理を組み合わせるときは、納豆を水洗いすることでネバネバを取り除くことができます。ネバネバが少なくなると、味が薄くおいしさが半減してしまいますが、他の料理と組み合わせることでカバーできます。
ネバネバがどうしても苦手という方は、水洗いした納豆から試してみてはいかがでしょうか。
まとめ
人の味覚を決定するのは、舌の表面にある「味蕾」という器官です。一説によると、味蕾は8歳ごろから急激に増え始め、12歳でピークを迎えその後は減少していくとされています。12歳までに食べたものが味覚に大きく影響を与えるので、外国人の方は納豆に抵抗感が生まれるといわれています。
しかし、大人になって好き嫌いが減った経験が誰しもあるように、味覚は変化していきます。
納豆は栄養価も高く、日本人に愛されています。和食を代表する食べ物といえます。まだ食べたことがないという方は、ぜひチャレンジしてみてください。