カルピスは日本の子供から大人まで、老若男女に愛されるドリンクです。「カラダにピース。CALPIS」というキャッチコピーで、テレビCMも流れています。
日本人ならば知らない人はいないといってもいいぐらい人気のドリンクですが、海外、特に英語圏の人には「カルピス」という名前はあまり知られていません。
その理由はカルピスという名前にあります。この記事では日本のカルピスはどういったドリンクなのか、どうして二通りの呼び方があるのかについてご紹介します。
カルピスはどういった飲料?
カルピスは乳酸菌飲料です。乳酸菌を発酵させたドリンクで、白い見た目と甘ずっぱい味が特徴です。原液は高濃度で味が濃いため、水で薄めたものを飲むのが一般的です。英語圏ではCALPICO(カルピコ)という名前で知られています。
食品の発酵そのものについてはこちらのページで詳しく書いています。
カルピスとカルピコの違い
なぜ日本と英語圏では名前が違うのでしょうか。その理由は英語の発音にあります。CALPIS(カルピス)という言葉は、英語圏の人にはCOW(牛)+PISS(尿)と聞こえてしまいます。
そのため英語圏では、誤解を避けるためにCALPICO(カルピコ)という名前で販売をしているのです。
カルピスはどうやって作られている?
カルピスは前述の通り、乳酸菌を発酵させて作られるドリンクです。以下のような工程を経てカルピスができあがります。
- 国産の牛乳を使います。工場で遠心分離機にかけ、脂肪分を取り除きます。脂肪分を取り除いた牛乳を脱脂乳とよびます。
- 脱脂乳に乳酸菌と酵母の集合体「カルピス菌」を投入し、発酵させます。
- 乳酸菌の力で脱脂乳が発酵され、上質な酸味が生まれます。(1回目の発酵)
- 砂糖を加え、酵母によって発酵させます。芳酵でさわやかな香りが生まれます。(2回目の発酵)
こうした工程でできたカルピスはさわやかな香りを持ち、白くて甘ずっぱいという特徴があります。
カルピスの原点は、創業者の三島海雲がモンゴルを訪れた際に飲んだ「酸乳」にあります。長旅で胃腸が弱っていた三島海雲は、モンゴルの遊牧民が飲んでいた酸っぱい乳をすすめられるまま飲んだところ、体も頭もすっきりしていったそうです。
そのおいしさと健康効果に驚いた三島海雲が日本に戻り、1919年に発売したのが「カルピス」です。以来、日本の国民飲料として100年以上愛される商品となっています。
カルピス飲料の例
カルピスはスーパーやドラッグストア、コンビニなどで購入することができます。カルピスを使ったいろいろな飲み物がありますので、ここでは代表的な商品を3つ紹介します。
カルピス原液
主に水で薄めて飲むための原液です。そのまま飲むのは味が濃いのでおすすめしません。
「自分で味を調整できる」「家族や友人と一緒に作ることができる」という特徴から、子供の食育ツールとしても親しまれています。
調査によると、「友達と一緒にカルピスを作った経験がある」と答えた人は6割以上、「家族と一緒に作った経験がある」と答えた人はなんと8割以上にものぼります。この結果からも、カルピスが日本の国民飲料として愛されていることがわかりますね。
カルピスウォーター
カルピスは原液を水で薄めて飲む必要があるため、その作業を手間に感じてしまうこともあります。そういった不便を解消するために開発されたのが「カルピスウォーター」です。
カルピスウォーターは、あらかじめ原液を水で適切な濃度に薄めたドリンクです。コンビニに必ずといっていいほど置いてある人気商品となっています。
原液を水で薄めただけの単純な商品だと思われがちですが、商品化には長い苦労がありました。水で薄めたカルピスの粒子は時間が経つと沈澱してしまい、品質が劣化するためなかなか商品化することができなかったそうです。
カルピスウォーターでは、粒子を原液の1/8のサイズまで細かくして、窒素ガスを封入することで鮮度の維持に成功しました。初めてカルピスが発売されたのは1919年ですが、カルピスウォーターが発売されたのはそれから70年以上も経った1991年のことです。
こうした長い時間をかけて新商品が開発されたことも、カルピスの人気をあらわすエピソードですね。
カルピスソーダ
カルピスソーダは原液に炭酸をいれた炭酸飲料です。発売されたのはカルピスウォーターよりも早く、1973年のことです。
その頃は自動販売機が普及し、外でも手軽に飲めるドリンクが求められていました。当時はカルピスウォーターはまだ開発されておらず、粒子が沈殿しにくいように炭酸をいれたカルピスソーダが発売されたのです。
これまで家庭でしか飲めなかったカルピスが外でも手軽に飲むことができるようになり、人気商品となりました。今でもいろいろなフレーバーと組み合わせた新商品が定期的に発売され、多くの人に愛されている商品です。
カルピスの豆知識
ここからは、カルピスに関する豆知識を紹介していきます。
カルピスの名前の由来
カルピスの名前はカルシウムの「カル」と、サンスクリット語の「ピス」に由来しています。「ピス」は仏教の世界で味の最高位をあらわす「サルピルマンダ」という言葉と、次に高位なものをあらわす「サルピス」という言葉からきています。
本来は最高位の「サルピルマンダ」からとって“カルピル”と言うべきところですが、カルピスの生みの親の三島海雲が音楽家やサンスクリット語の権威の方に相談した結果、みんなが言いやすい「カルピス」が採用されました。
カルピスのパッケージデザイン
カルピスのパッケージには水玉模様がデザインされています。これはカルピスの発売日が7月7日であることが理由です。
日本には7月7日を七夕といって、短冊に願い事を書くと叶ういった風習があります。発祥は中国とされ、空を流れる天の川の近くにある「こと座のペガ(織姫)」と「わし座のアルタイル(彦星)」の物語が有名です。
カルピスのパッケージはこの「天の川」をイメージしています。天の川を表現するために、パッケージに水玉模様が描かれているのです。
カルピスのボトル
カルピスは以前はビンで発売されていました。今のボトルは「ピースボトル」と呼ばれ、様々な工夫がほどこされています。
このボトルは4層構造になっており、風味を劣化させてしまう「光」と「酸素」を通さないようになっています。
また、ボトルの形状も特徴的です。真ん中にくびれをつけることで、手の小さい女性や子供、力の弱いお年寄りまで全員が持ちやすい形状になっています。
さらに、ボトルの素材には植物由来のプラスチックを使っており、環境にも配慮した設計になっているのです。
カルピスのキャッチコピー
冒頭でお話ししたように、カルピスには「カラダにピース。CALPIS」というキャッチコピーがつけられています。このキャッチコピーはテレビCMにも使われています。
このキャッチコピーは2007年につけられ、同時にコーポレート・スローガンとされました。
それ以前にも、カルピスには印象的なキャッチコピーがつけられていました。1922年に創業者の三島海雲は、カルピスに「初恋の味」というキャッチコピーをつけて新聞広告を出しています。
「甘くてすっぱいカルピスは初恋の味だ」「初恋という言葉には、人々の夢と希望と憧れがある」という知人の言葉に納得して決めたそうです。
大企業には印象的なキャッチコピー(例:NIKEの「JUST DO IT」)がありますが、カルピスもそんな印象的なキャッチコピーをもつ企業の一つなのです。
まとめ
カルピスは100年以上も日本人に愛されてきたドリンクです。子供の頃から飲んでいて、家族や友達と一緒に作ったという思い出を持つ人も多くいます。
スーパーやドラッグストア、コンビニでも手軽に入手できるので、まだ飲んだことがないという人は、ぜひ一度飲んでみてはいかがでしょうか。